悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「な、何で…」
深く考えても不可思議な出来事を解釈するなど出来る訳がない。
後ろから顔を出した三浦も、廊下を見て絶句している。
「三浦、部屋を変えよう!」
「え?」
俺は大きく頷いて自分にも言い聞かせるように言った。
「この部屋自体が古くて震度を引き起こしたんだ。だから、部屋を変えた方が良い!」
そうだ、そうに違いない!
心霊現象なんて冗談じゃないぞ!
必死になっている俺に三浦は困った笑みになり頷く。
「そう…ですね。部屋を変えます」
内心、ホッとした。
霊感の強い三浦なので《これは霊的なものです》と告げられたら言葉を失っていただろう。
「実は気になっている部屋があって…」
そう言いながら三浦は向かい側の部屋に目を向け指を差す。
「何となくですけど、思わず手がドアノブを掴みそうになったんです」
俺の場合は本当に手がドアノブを掴んでしまったけどな。
「入ってみるか?」
俺がそう聞くと三浦は笑顔で頷き、部屋の扉に近づいてノブを回す。
部屋に入った瞬間、一陣の風が俺と三浦に吹く。
激しい風ではない。
優しくて涼しい風だ。
それに今居た部屋よりも、心地よくて視線など一つも感じなかった。