悲愴と憎悪の人喰い屋敷
慌てて駆け寄り外傷がない事を確認すると、俺は三浦の頬を軽く叩いて呼びかける。

「おい!…おい!三浦!しっかりしろ!」

こんな耳元で叫んでいるのにも関わらず、三浦は呻き声すら口にしない。
まさか、死んでいるわけじゃないよな?
そう思い手首の脈を親指で確認すると、時計の針と同じ速さの鼓動が確認できた。

「良かった、息はあるな」

安堵した俺は三浦を胸に抱えて扉に向かう。
部屋まで運んで起きないようなら、明日事情を聞くしかないな。
そう思考してノブに手を掻け扉を押し開けようとしたが、

「え?」

向こう側で誰かが押さえているかの様に扉が開かない。

「ちょっ…何でだよ!」

もしかして、扉が壊れかけだったのか?
何度か押したり引いたりしたが、頑固な扉は俺を室内から出したくないらしい。
あ、そういえば上にも扉があったよな。
そっちなら開くだろ。
三浦を抱え直し踵を返そうとした時だ。
突如、鋭い視線を背中に感じて背筋が寒くなる。
後ろを振り返っては駄目だという恐怖が襲い、俺は生唾を飲んで体を強張らせた…。
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