悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「そのブレスレット…もしかして誰かに貰った物ですか?」

「え?何で分かったんだ?」

三浦にしか話していない事実を望月が口にしたので俺は驚く。
貰った経緯を話して下さいという眼差しに、別に隠す事情ではないと三浦にも話した内容を望月にも話す。
話を聞き終えた望月は、くの字に曲げた人差し指を口元に当てる。
考え事をする度に、そういう仕草をするって事はどうやら望月の癖らしい。
考える望月を見つめつつ、俺も窓辺から元居た椅子へと戻る。

「少しですけど、人喰い屋敷の真実が見えました」

俺が椅子に座ったと同時に望月が顔を上げて言う。

「真実?」

首を傾げて聞き返すと望月は大きく頷く。
そして、困ったような表情で俺を見て聞いてくる。

「知ってしまったら罪の意識に苛まれるかもしれませんよ?それでも聞きたいですか?」

望月としては俺に垣間見えた真実を話したくないらしい。
少し迷ったが訳も分からないまま、また変な霧に襲われるよりは良いと考え頷く。

「知らないよりはマシだ」

「解りました」

望月は納得し俺のブレスレットを見ながら語り出した。

「人喰い屋敷の目的はブレスレットを取り戻す事です」

「え?」

俺は驚きブレスレットを一瞥して望月に視線を戻す。
視線を戻した俺の目を見つめ返し、苦笑して真剣な目で言った。

「取り戻すために屋敷は貴方を襲うでしょうね」

「そ、それは殺される可能性があるって事か?」

黒い霧に襲われた時の事を思い出し、俺は緊張して聞く。
あのまま、望月が現われなかったら息苦しさで死んでいたかもしれない。
一緒に居た三浦も例外ではないだろう。
そんな思考を打ち消すように望月は言った。

「霊的なものに殺す能力はありませんよ」

ホッと安堵したのも束の間、望月は続けた。

「物や人を操って死に至らしめる事は出来るでしょうけどね」

「!!」

聞いた瞬間背筋に悪寒が走り、それと同時に屋敷の思惑が分かってしまう。
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