悲愴と憎悪の人喰い屋敷
俺は静かに眠っている三浦へと目を向けて、信じたくない事を言葉にした。

「ま、まさか…三浦を操って俺を殺すつもりだったのか?」

問い掛けに望月が何も言わないところを見ると、どうやら正解らしい。
何だか腹が立ってきた。
目的のために手段を選ばない奴が俺は一番嫌いなんだ。

「じゃあ、今まで行方不明になった人達も屋敷に殺されて…」

そうだとすると現在、行方不明になっている部長の安否も難しいだろうな。

「意外ですね。もう解っていると僕は思っていたんですけど…」

「何をだ?」

「部長さんの居場所ですよ」

望月の言葉に俺は耳を疑う。
そんなの分かる訳がない。
俺は探知機か。

「あ〜…さっき言ってた、霊的…」

「霊的感知能力?」

「そう。それの能力で俺が分かっていたというのか?」

「はい」

にっこりと微笑まれて俺は気が抜ける。

「買い被り過ぎだ。居場所なんか解らない。幾度も視線は感じたりはしたけど……!!」

自分で言った言葉に、俺は口元を押さえて驚く。
今、俺は何て言った?
視線を感じる?
おいおい、それって…まさか。

「気付きました?行方不明になっている人達は生きています。家具や食器、あらゆる物の中に閉じ込められているんですよ。生き地獄ですね」

生き地獄…望月の例えはぴったりだと思った。
閉じ込められた空間で、相手が見えているのに声が届かない。
出ることも出来ず屋敷に逆らうことも出来ない状態を地獄と言わず何と言う?

「それじゃあ、椅子から発生した赤い染みは部長の持っていたワインなのか?あの中に…」

部長がいるのかと聞こうとして、俺は言葉を飲み込む。
恐ろしい真実を認めるのが怖かったからだ。

「僕達に助けを求めて、自分はここに居るんだと意思表示したと思います」

これは夢なのか?
悪夢としか言いようがない。
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