悲愴と憎悪の人喰い屋敷
ホラー映画や小説の世界で不死身な屋敷に若者たちが迷い込み、行方が分からなくなったり殺されていく物語があるが、現実で事件に巻き込まれるなど誰が想像できる?
これが夢なら覚めてくれ。

「どうしました?」

「え?あ、いや…何でもない」

現実逃避しようとする俺に望月が静かに聞いてくる。
そうだよな、これが現実というなら覚悟を決めるしかないんだ。

『お前のせいで私の娘は…』

あの黒い霧は俺にそう言った。
【娘】とは俺にブレスレットをくれた、あの子に間違いはないだろう。
ブレスレットを俺にあげたことで、少なからず危険な目に陥ったのは予想できる。
それと同時に望月が言った罪の意識に苛まれるかもしれないの意味を理解した。
確かにブレスレットを俺に渡さなければ、あの子は危険にならずに済んだかもしれない。
けど、疑問が浮かんでくる。

「なあ…どうしてブレスレットを俺に渡した事で、あの子は何か危険なものに巻き込まれたんだ?ブレスレットがあるかないかで生死が決まるものなのか?」

雨の日に傘を差していないと、ずぶ濡れになるようにブレスレットを持っている事で何かに襲われないとでも言うのだろうか?

「詳しい事は今の僕には分かりません。ですが、閉じ込められている人を助ける事ができる唯一の鍵なんじゃないかと僕は思います」

「どうしてだ?」

「別荘の魔力から貴方を守っているのが何よりの証拠だからですよ」

確かにそうかもしれないと納得する自分がいた。
外へと続く扉や窓を開けれる事もだが、危険を察知して俺を別荘へと向かわせないため車をエンストしたり、視線の感じない部屋へと誘導したりと力を発揮していたのではないだろうか。
このブレスレット…別荘の屋敷と一体どんな因果関係があるって言うんだ?
あの子も関係しているって事だよな。
あ〜謎だらけで頭が痛くなってきた。
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