悲愴と憎悪の人喰い屋敷
それから数分後。

「あれ?」

突然、車が静かに止まりエンジン音が聞こえなくなった。

「え、まさか…エンストか?」

俺と同じ事が三浦の車にも発生して俺は驚く。
人間の風邪じゃあるまいし、車から車に伝染するって事はないだろうけど不可思議だ。

「さっき、スタンドで車の点検をして貰ったんです。エンストするなんて変ですよ」

そうは言いながらも、車が停まってしまっている現実に三浦は明らかに動揺している。
何度かキーを捻っていた三浦だったが、エンジンの反応は皆無で諦めて溜息を吐く。

「すみません…僕まで、こんな事になってしまって」

助ける事が出来なくなってしまったと、三浦は頭を下げる。
これが部長なら確実に怒鳴ってるよな〜。
そんな事を思いながら俺は三浦の頭に軽く手を置いて言った。

「気にするなって。二人で欠席すれば怖くないさ。それに…」

「?」

「一度、車の中に泊まって見たかったんだ。夢が叶ったよ」

一人なら怖くて泊まる事など無理だが三浦と一緒なら心強い。
正直な気持ちを言って笑うと、三浦は困った様な嬉しい様な笑みを向ける。

「僕も初めてです。あ、毛布のタオルケットなら一枚乗せていました」

そう言って三浦は後ろの座席からタオルケットを取ろうと振り返った。

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