悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「圭くんのお兄さんは、もしかして屋敷の犠牲者なんでしょうか?」

「え?」

突然、望月が驚異的な事を口にしたので俺は愕然とする。
見ると望月はくの字に曲げた人差し指を口元に当て、考えていた。

「こ、根拠はあるのか?」

三浦の兄は亡くなっていて、この世にいないのではないかと思っていた俺は少し動揺して聞く。

「この屋敷に泊まっているのは餌になった僕達だけです」

「それは解ってるさ」

改めて餌だとか言われると余計に怖くなるので止めて欲しい。
といっても『怖いからやめろ』などと小心者だと思われるから絶対言わないけどな。
そんな俺の心情を知らず、望月は根拠を話し出す。

「なのに、圭くんはピアノを弾いている相手をお兄さんか確かめると言いました」

可笑しいですよね?という顔で望月は同意を求める。

「屋敷の犠牲者とは限らないだろ?行方不明になっているのかも知れない」

死んだという証拠である遺体がない限り、例え誰かが死の告知をしようが人は相手の死を絶対に信じないだろう。
大切な存在だったのなら尚更だ。

「ん〜…まぁ、そうなのかもしれませんね」

半信半疑といった感じに望月は頷く。
三浦の兄が屋敷の犠牲者なら、弟を呼ぶ訳がない。
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