悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「!」

ちょっと待てよ?
三浦の車がエンストしたのがブレスレットの力ではなく兄の力だとしたら?
それに安心できる部屋を三浦が選べたのは何故だ?

「どうしました?」

「望月…お前の言う事は真実かもしれない」

確信的な事を思い出し、俺は緊張して生唾を飲む。

「噴水だ…」

「噴水?」

何のことを言っているのか解らないと言うように、望月が首を傾げて答えを促す。
俺は一呼吸して三浦を一瞥した後、望月に大きく頷いた。

「ここから見える噴水を見て三浦は涙を流したんだ。三浦の兄は多分…」

噴水の中に居ると言うことが出来ず、俺は言葉を止める。
望月は最後まで聞かなくても理解できたのか、静かな足取りで再び窓辺へ近づく。
そして、噴水を下に確認すると俺の方に目を向けた。

「見たいですね。思念が見えます」

「え、分かるのか?」

「はい。どこに人が囚われているか理解はできます」

望月は自慢する訳でもなく微笑む。
俺みたいに視線を感じるだけじゃないのか。
さすがは退魔師といったところだな。
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