悲愴と憎悪の人喰い屋敷
三浦は、この別荘で自分の兄が行方不明になった事を知っていたのだろうか?
いや、それは考えにくいな…。
ここへ来る時に三浦は行きたくないような感じだったし…知っていたのなら、そんな態度はとらない筈だ。

「囚われた人達を助ける術は、このブレスレットの力だけなのか?」

「はい。僕だけの力で可能なら、北川さんみたいに外への扉を開けることが出来る筈ですし…」

自分の力量を知ってか、望月は肩を竦めて溜め息混じりに言う。
ブレスレットの力を、どう使うのか解れば助けられるのにな…。

「あ…」

ふと解決策が思い浮かんで、俺はブレスレットを差して望月に提案する。

「なぁ、望月の力とブレスレットの力を合わせてなら出来るんじゃないか?」

ひとつの力では無理でも強力な力が二つになれば、救出ができるかもしれない。
望月は少し考えた後、小さく頷いた。

「試してみる価値はありますね。だけど、圭くんが寝ている部屋では忍びないですし、場所を変えてやってみましょう」

確かに何が起こるのか分からないし、寝ている三浦を起こしてしまったら気が引ける。
俺も望月の意見に同意して、二人で静かに三浦の部屋を出た。
< 52 / 76 >

この作品をシェア

pagetop