悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「誰かに助けられたんですか?」

空間から出て来た時の言葉で推測したのだろう。
俺はまだ手の感触が残る手を見て大きく頷く。

「闇の中で途方に暮れていたら…手を引かれたんだ」

あの出口へと導いてくれた手の主は一体、誰だったんだ?

「この屋敷には、何か大きな…邪悪な存在がいますね。もしかして……」

言葉を飲み込んだ望月に、俺は聞かずにはいられず問う。

「もしかして…何だよ?悪魔とか言うつもりか?」

俺の言葉に望月は目を丸くする。
どうして解ったんだという顔だ。

「僕には専門外なので、正直言うと手に負えないかもしれません」

唯一、得体の知れないものと闘う事が出来る望月は弱気な事を言う。

「そ、そんな無責任な事を言うなよ…」

この閉鎖空間と化した屋敷の中、外に出ることが出来ない以上は専門家を捜しに行く事さえできない。
つまり、専門外だとしても今は望月だけが頼りなんだ。

「努力はしますから安心して下さい」

笑顔で言う望月を見て、俺は口をつぐむ。
望月だって相手が何者か分からなかったんだろうし、強く攻める事はできないか…。
< 55 / 76 >

この作品をシェア

pagetop