悲愴と憎悪の人喰い屋敷
思わず声を荒げると、苦笑したまま望月は両手を前に出して宥める。

「一つずつ答えますから落ち着いて下さい」

それを聞いた俺は黙って、望月の話に耳を傾けた。

「そうですね…まず、危なかったという経緯をお話します」

言いながら近くのソファーに座り、回想しながら望月は話し出す。
それによると、椅子から弾き飛ばされた直後に俺は物体に取り込まれてしまったらしい。
全然記憶にないということは、きっと固く目を瞑っている時に吸収されたのだろう。
物体は当然、望月をも吸収しようと迫り来る。
中には入り俺を助けようと決意していた望月は逃げる事をせずに、おとなしく待つ事にしたようだ。
自分の命を最優先にする奴なら、絶対に逃げ出していただろうな。
そして、望月が物体の魔力で引き摺られかけた時。

『!』

突然、目の前に女の子が現われて物体の中へと入って行く姿が望月の目に映る。
女の子は透明で後ろ姿だったため顔は確認できなかったらしい。
その子が入って行った直後、不思議な事に物体の動きは停止。
数秒後、絶句している望月の前に吸収されていた俺が出て来たという。
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