悲愴と憎悪の人喰い屋敷
望月の話を聞いて俺は確信する。
物体の中に入り助けてくれたのは間違いなく飛ばされる前に聞いた声の子供だ。
でも、どうして俺達を助けてくれたんだ?
あの子が居るなら屋敷に喰われた人達がいるのはおかしい。
…!ひょっとして、その女の子って!

「俺にブレスレットをくれた子…なのか?」

そうだとしか考えられない。
思惑が一緒だったのか、望月は俺の言葉に小さく頷く。

「僕もそう思います。これまで一度も無事に屋敷から脱出出来た人はいませんし。一人で救出を試みていたら僕は吸収されておしまいでしたね〜あはは」

笑って言う事か?
世間話でもしているような口調の望月に、俺は額を押さえて脱力する。

「どうしました?頭が痛いんですか?」

誰のせいだよ。
喉まで出かけた言葉を、俺は口に出さず望月に顔を向ける。

「大丈夫…。で?次の質問の答えは?」

「え?何でしたっけ?」

ハリセンはないか、ハリセンは。
きょとんとして俺を見る望月の頭を、スパーンと叩いて記憶を甦らせてやりたい。
そんな衝動を何とか抑えて俺は腕を組み、もう一度質問をぶつけることにした。
ここで望月のペースに飲まれたら負けだ。
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