悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「だから…何人もの実力者が失敗している危険な依頼を受けたのは何故なんだよ?」

危険地帯に足を踏み入れるようなものだろうに…。
『触らぬ神に祟りなし』と諺にもあるように人喰い屋敷だと知っていたら普通は行かないはずだ。
事情を知っていて踏み込むのは、自分の実力に自信を持った奴か命知らずな奴だろう。
どっちかというと望月は後者な気がするけど。

「管理人さんは友達の祖父なんですよ」

「え?」

という事は、その友達に頼まれて依頼を受けたのか?
その俺の思考を読み取って、望月は小さく首を振って苦笑する。

「頼まれた訳ではありません。友達が助けられないと悲痛して泣いていたのを目にして引き受けました」

その友達は本当に管理人さんの祖父が大好きだったんだろうな。
物心がつく前に祖母と祖父を亡くしていた俺は、少し羨ましいとさえ思う。

「危険だって止められただろう?」

祖父から事情を聞いていたのなら、友達を心配して関わらせない筈だ。
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