悲愴と憎悪の人喰い屋敷
望月の友達も俺と同じ心情だったようで望月は頷く。

「はい。でも…自分の出来ることを精一杯やって助けたいじゃないですか」

「望月…」

危険だと思うよりも友達を助けたいと思う心の方が強かったんだろう。
本当に良い奴だよな。
自分の出来ることを精一杯か…。

「そろそろ、寝ましょう」

望月に言われて壁の時計を見ると、夜十二時を僅かに過ぎていた。
よく夜中の二時は丑三つ時で幽霊の時間というが、霊嫌いな俺は夜の時間全てが苦手だ。

「寝ている間に襲われるという事はないのか?」

睡眠中は人間が一番油断している時だしな。
寝て起きてみたら、いつの間にか屋敷に喰われていたなんて御免だぞ。

「それは大丈夫ですよ」

何の躊躇もなく断言する望月に、俺は首を傾げて聞き返す。

「根拠はあるのか?」

「ベッドに喰われた人が居ないからです。これは推測なんですが意識がある人は恐怖したり悲鳴を上げますよね?支配者は、それを見るのが好きなんですよ」

とんでもないな。
殺人鬼と一緒か…。

「分かった…望月の言葉を信じて寝るよ。また明日な」

「はい。おやすみなさい」

居間を寝床に決めていた望月を残し、俺は扉を閉める。

「……こ、怖くない、怖くない」

廊下に出た時、得体の知れないものが潜んでいるような気がして足早に階段を駆け上がり、自分の部屋へ辿り着いた俺は扉を素早く閉めた。
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