悲愴と憎悪の人喰い屋敷
恐る恐る振り向くと、

「な、何だ…」

そこには化粧台の鏡に映った自分の姿があった。
自分の姿に驚くなんて情けない。
そう、安堵した俺は自分の映る鏡を見返して驚愕する。
明らかに自分ではない別の姿が透けるように映っていたのだ。

「ぅわ!」

あまりの出来事に俺は声を上げて後退する。
怖い時って何故だか得体の知れないものを食い入るように見てしまうよな。
かく云う俺もそんな性格で、鏡に映っている何かを凝視した。

「お…女の…子?」

下を向いて顔は見えなかったが、金色の長い髪が見えて俺は呟く。
も、もしかして…夢に出てきた女の子なんじゃ…。
そう思うと何故か徐々に恐怖心は消え、俺は女の子が映る鏡へと近づいていた。
すると、少女は静かに顔を上げる。
綺麗な青い瞳から、今にも涙が零れそうだった。

『…パパを……助け…て…』
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