悲愴と憎悪の人喰い屋敷
助けて?
それって、どういう?
俺が何か言う前に少女が再び口を開く。

『ブレスレット…が…あれば…できるから…』

「!!」

そう言われ少女の面影が子供の頃に出会った子と同じだと感じた。
笑顔の似合う可愛い子で、子供心に喜ぶ顔が見たいと少女を連れて遊んでいたっけ。
悲しい顔をしていたから今の今まで思い出せずにいたらしい。

「皆を…屋敷に捕われている人達を助けるには、どうすれば良い?」

目前の少女も助けたいという思いで、俺は鏡の中に佇む少女に聞く。
初めて声をかけられた少女は一瞬、茫然としていたが静かな動作で自分の手首を指す。

『探して…』

「え?」

どういう意味か聞こうとしたが、鏡が水面のように揺れて少女の姿が消えた。
望月の言っていたように強大な敵が屋敷を支配しているのなら長時間、姿を見せるのは難しいのかもしれない。
手首を指差して探してって言っていたよな。
それって、どういう……!
鏡に映る自分の手首を見て、俺は確信したように少女が言おうとした言葉を理解する。

「もしかして…ブレスレットを探せって事なのか?」

もう目の前に居ない少女に問いかけるように俺は呟いていた。


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