悲愴と憎悪の人喰い屋敷
不可解な行動
翌日。
あれから戻って眠りについたが、全然寝た気がしない。
少女を助けたいのと、望月に事情を説明しようと焦って眠ったからかもしれないな。
あの後、すぐに望月の元へ駆けつけたかったが夜中に出歩くのは怖いし寝ているところを無理に起こすのも気が引けたので我慢をした。
窓の外を見ると早朝の青白い空が輝き、鳥のさえずりも聞こえている。
昨日の雨は止んだみたいだ。
こうして景色を見ていると、人喰い屋敷に居ることを忘れてしまう。

「あ…そうだ。望月の所へ行かないと…いや、三浦の様子が先かな」

かなり衰弱していたみたいだし心配だ。
着替えをし扉を開けようとした時、小さなノック音が響く。
来客かと思ったが別の部屋に、誰かがノックをしているようだった。

『三浦…ちょっと良いか?』

『え…樋口先輩?』

声から察するに三浦の部屋に樋口が訪ねているらしい。
珍しいな…。
確か三浦の話では仲が良くないって言ってたよな。
俺が知らない間に仲良くなったとか?
そう思考していると扉の閉める音が聞こえ、樋口は三浦の部屋に入ったようだった。
何だろうな…どうしてか二人の会話が気になる。
一体、樋口は三浦に何の用事なんだ?
廊下に出て俺は樋口の入って行った三浦の部屋を暫く見つめる。
聞き耳を立てるなんて行為は、やっぱり非常識だよな。
人には聞かれて欲しくないことの一つや二つあるだろうし。
気にはなるけど止めておくか。

階段を下りようとした俺の耳に、何かが割れる音が聞こえてきた。
「!」

明らかに三浦の部屋からだ。
ま、まさか乱闘になったんじゃ…!

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