悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「高校が一緒だっただろう…と聞かれました」

「え？そうなのか？」

今まで樋口の口から聞いたことのなかった意外な事実に俺は驚く。
けど、高校が一緒なだけで樋口が三浦を殺しかけるなんて理由ある訳がない。
普通は《あ、そうだったんですか》と高校時代の話に華を咲かせるはずだ。
俺が疑問に思ったことが理解できたのか三浦は苦笑をして言う。

「僕も言われるまで気付かなかったんです。同じ街に住んでいたんですかと聞こうとしたら、突然飛び掛かられて『俺の過去を胱矢にバラしたら許さない』って…」

「え？な、何で…そこで俺の名前が出てくるんだよ？」

樋口の言った言葉の中に、俺の名前が出てきて思わず聞き返す。
だが、三浦も見当がつかないようで首を横に振った。

「僕にも分かりません。樋口先輩の言う過去っていうのも何の事なのか解りませんし…」

要するに樋口は高校が一緒だった後輩の三浦が、自分の過去を知っていると思い込み凶行に及んだということか。
そして、それは何故だか知らないが俺に関係するものらしい。
樋口が高校生の頃は、もちろん俺も同じ高校生だ。
大学で樋口と知り合いになったので高校時代に面識はない。
それとも、俺が覚えていないだけだろうか？

「俺、樋口に聞いてくる」

このまま触れずにおこうと思ったが、俺が絡んでいて三浦が襲われたのなら事情を聞かずにはいられない。

「え、北川先輩！」

三浦が制止させようと叫んだが、それを無視して俺は樋口を追い駆け部屋を飛び出した。
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