悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「望月、俺に出来る事はないのか?お前だけに負担をかけさせたくないぞ」

悪魔の狙いは俺だけの筈だ。
だったら、出来る事は一つだろ!

「なっ!北川さん!駄目です!」

俺は黒い物体の貼り付いていない場所から、加護していた力の外へと飛び出す。
後ろを見ると案の定、黒い物体は俺の方へと蛙の如く飛び跳ねながら追い駆けて来た。
あの速度なら絶対に追いつかれる心配はない。
このまま扉から出れば望月も逃げられる。
そう確信して扉の前まで、近づいた時だ。

「北川さん!上です!」

悲鳴に近い望月の声を後ろで聞いたと思った瞬間、俺は背中に重圧を感じ床に倒れる。

「くっ!……っ!?」

首だけを後ろに向け背中を見て俺は言葉を失う。
赤い瞳で紫に近い肌をした人型の何かが居た。
頭に角、背中に黒い羽根。
絶対に人間じゃない。
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