悲愴と憎悪の人喰い屋敷
【逃がす…もの…か…】
この声!
キッチンで襲ってきた奴の声!
という事は、こいつが悪魔!?
「北川さんっ!」
俺を助けようと望月が動いたような気がした。
だが、後ろの『悪魔』がどこか余裕のある声色で冷たく言い放つ。
【邪魔…をする…な】
「くぅっ!」
「望月!?」
望月は無事なのか?
聞いたことのない音がして俺は驚く。
だが、背中に乗られているので安否を確かめる事さえできない。
パラパラと崩れる音が微かに聞こえるという事は、壁が半壊したんじゃないのか?
何とか望月の状態を知ろうと顔を向けようとしたが、
【さて……】
「うっ!!」
傷を負っていた腕に鋭い痛みを感じて目を向ける。
「!?」
正直見なければ良かったと後悔した。
無数の血管のようなものが傷口に突き刺さっていたからだ。
しかも、血管は悪魔の口から飛び出ている。
その血管から赤いものが見えたと思った瞬間に、今まで感じた事のない痛みが襲う。
「うあぁっ!!」
こいつ、俺の血を吸っているのか?
【最高の血を…味わうのは何年ぶりか…中で少しずつ…吸い尽くしてやろう…】
満足そうに悪魔が口にした途端、下の床が底無し沼と化し俺の体は沈んでいく。
「や、やめ…ろ!」
【諦めろ…足掻いても…無駄だ】
絶体絶命だ!
俺は悪魔に血を吸い尽くされて死ぬのか!?