先生はなぜ飛びたかったのか…
出会い
なんとなく生きていた。

それなりに社会に対する問題意識は持ち合わせていたけど、

僕の無力感はだらしがないほど大きかった。



まだ桜の舞う景色を窓から眺めながら

なんとなく講義を受けていた。


大学3年生の春。


「私の講義を受けるの初めての人、手挙げて〜」

まじめな生徒が数人手を挙げていた。

先生の質問もこの講義内容も僕の人生には関係のないことだった。


「結構、以前に私の講義取ってくれてる人、多いんだね。じゃー、省ける内容は省いて行くよ。」


目のクリクリっとした教授だった。

髪はボサボサで、色が黒くて、

服も登山帰りみたいに土汚れてた。

清潔感はない。

40代前半くらいで腹もでてる。

声だって、鼻の先からでてるみたいに高くて甘かった。

でも、とても親近感の湧く人だった。


だらしなく、頬杖をついて窓を眺めながら先生の声を追っていた。

彼なら僕の人生解き方を教えてくれる。

ほのかな期待が鈍くではあったけど、僕の鼓動を刺激していた。
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