My true love
「君、名前は?」
言える訳がない。
私は下を向き黙り込んだ。
こうすれば、誰もが諦めてどこかに行ってくれる。
私が16年間で学んだ事。
じっと下を向き、爪先辺りをずっと見ていた。早くどこかに行って欲しいという気持ちでいっぱいだった。
「僕は、仙崎大翔。大堂学園高等学校高等部医学科3年。趣味は読書。特技はアーチェリー。よろしく。これ、僕のアドレスだから、暇なとき電話でも、メールでもして。」
と言って、アドレスが書かれたメモを渡し、走ってどこかに行ってしまった。
メモには、とても丁寧な字で書かれていた。
少し湿ったメモを私はギュッと握りしめた。
もちろん、私からメールも電話もする事はできない。でも、話しかけてくれるだけで、本当に嬉しかった。
だって初めてだから。
こんなに、身近に男性を感じられたから。