PURELOVE
「…うん」


すごく嫌な空気が流れている。


最初からやっちゃったなぁ~


…ぶっちゃけ、もう帰りたい。


電車に揺られながらあたしがそんなことを考えていると、圭君が口を開いた。


「俺がいない間に、何かあった?」


「……………」


男嫌いになったなんて、言えるわけない。


あたしは下を向いたまま、何も言わなかった。


圭君も、何も言わない。


怒っちゃった…よね?


そう思った瞬間。


「大丈夫だよ、みっちゃん」


すごく優しい声で、圭君が言った。


あ、その言葉…。


あたしはある場面を思い出した。


――――――――――――

―――――――――――


幼稚園で圭君と遊んでいたあたし。


『みっちゃん、はやく~!』


『まってよぉ~!』


少し先を行く圭君を必死で追いかけていると…


ベチャッ!


そんな音がしそうな勢いで、思いっきり転んだ。


『エ~~~~ンッッ!いたいよぉっ!!』


園庭に響き渡るような大きな声で泣いた。


慌てて駆け寄る圭君。


なかなか泣き止まないあたしに、圭君は優しく頭をなでなでしてくれた。


そして……


『大丈夫だよ、みっちゃん』


…そう言ってくれたんだ。
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