PURELOVE
早速中に入って、指定された席に座った。


楓君は売店で大量に食べ物を買って、一人黙々と食べてる。


全っ然、ロマンチックの欠片もないよぉ…。


でも…楓君にロマンチックを求めるのが、最初っから間違ってるのかな?


試合が始まった途端、楓君は目をキラキラさせながら熱心にボールを追いかけている。


…お兄ちゃんじゃなくて、弟に格下げかも。


一人小さく溜め息をつきながら、あたしは席を立った。


「楓君。ちょっとトイレ行ってくるね」


「…お~」


試合を見たまま、答える楓君。


ちゃんと聞こえたのかな?


やっぱりルールが分かんないし、どっちかを応援しているわけじゃないから、面白くない。


楓君が試合してる時は面白かったのになぁ~


何でだろう?


不思議に思いながら、スタジアムの中をグルグル回った。


「ねぇ!」


いきなり腕を掴まれた。


えっ!


驚いて向くと、そこには男!


鳥肌が立ってすぐさま逃げようと思ったけど、その男の力は強かった。


「ちょ…ちょっと、離して!」
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