Crazy Love


───俺の書いた記事が載った雑誌の発売日前日。

今にも雨が降り出しそうなどんよりとした曇り空だったが、俺は雲一つない晴れ晴れとした気持ちで、一足先に出来上がった雑誌を持って2週間ぶりに彼女のマンションを訪ねた。

玄関が開くや否や俺は、興奮気味に彼女に雑誌を差し出し、その時初めて俺の書いた記事が形になったことを伝えた。

当然彼女も飛び上がるぐらいの勢いで、大喜びしてくれるものだと思っていた。

しかし芹は、口元だけニッコリと笑って

「そう。おめでとう」

と落ち着いた声で言い、俺を部屋に通すと冷静な面持ちで俺の記事を読んだ。

いつもとは明らかに違う彼女の態度に戸惑いながら、俺はこの日の為にずいぶん前から用意していたもう一つの物を取り出すためポケットに手を入れた。

それは俺が芹と付き合い始めてからコツコツと貯めた金で買った婚約指輪。

俺は、俺の夢が第一歩を踏み出したら彼女にプロポーズをしようと、前々から決めていたのだ。

小ぶりのダイヤが付いたお世辞にも豪華とは言えない指輪だけれど、22歳の俺の精一杯の気持ちを形にした物だった。

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