Crazy Love

芹の家に向かう間、俺はどんな風に指輪を渡そうかと色々なパターンを想像していた。

例えば

───テレビでも見ながら、芹の手に触れるフリをして、さりげなく彼女に指輪をはめる。

驚いている彼女に俺は「俺とこれから先の人生、一緒に歩いていこう」とじっと目を見つめて言う。

彼女は涙で目を潤ませながら「はい」と小さく返事をする───

というような具合に。


俺は口から心臓が飛び出しそうなほど緊張しながら、想像通りには落ち着いていられず少しどもり気味に

「あ、あのさ！」

と話を切りだした。

しかし、それと同じタイミングで俺の持ってきた雑誌に目を向けたまま芹も口を開き、予想もしていなかった言葉を俺に投げつけてきた。

「和也くん、別れよう」

「え!?」

一瞬何を言われたのか分からなかった。