Crazy Love
その一言で、俺の心が大きな音を立てて壊れるのを感じ、自分でも訳が分からないまま、手を引き寄せ強引に彼女を抱き締めた。

「は……離して」

芹は突然の俺の行動に、一瞬ビクッと体を震わせたが、俺を振り払おうとグッとその細い腕に力を込める。

「嫌だ」

もう、頭は働いていなかった。

ただ、芹と離れたくなかった。

「離して。もう触れられるのも嫌なの」

力ではどうにもならないことを感じたのか芹は抵抗をやめ、俺を諭すような冷静な声だった。

「嫌だ……」

「まだ分からないの? そういう子供じみたところが嫌だって言ってるの!」

言うことをきかない俺に、静かに言っても効かないと思ったのか、彼女はその時初めて声を荒げた。

その言葉で、彼女を抱き締めていた腕から一瞬にして力が抜ける。
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