Crazy Love
店を出ると、俺は無言で歩いた。
俺はあんなに動揺してしまったのに、彼女は全く動じない様子で、営業とはいえ俺に笑顔で話しかけてきた。
きっと芹の中で俺は、とっくに『過去の思い出』に変わっているのだろう。
忘れていたと思っていたのに、俺はまだ彼女を思い出に変えることが出来ていなかったんだ。
「和也、どうしたの!? 急におかしいよ?」
沈黙に堪えられなくなったように、理央が心配そうな顔で俺に尋ねる。
「なんか怖い顔してるし」
「あ、ゴメン……急に仕事のこと思い出しちゃって。ゴメンな、デート中に仕事モードになったら駄目だよな」
苦し紛れの言い訳だ……