Crazy Love


──芹が彼氏と『お付き合い一周年』で行こうと予約を取っていた、半年予約待ちの人気イタリアンレストラン。

ところが、前日に振られてしまい……

完全にテンパっていた芹は、たまたま休憩が重なった俺に声を掛けてきた。

俺は異性として全く意識はされていなかった。


けれども、そのとき、すでに俺は彼女を意識し始めていた。芹が彼氏に振られた現場を、たまたま目撃してしまったからだ。

彼氏を笑顔で見送ったあと、冬の張りつめた空気の中で、寒さと悲しみに震えながら、まるで涙をこらえるように夜空を見上げる彼女の姿はとてもキレイで、俺は見てはいけないと思いながらも目を離すことが出来なかった。

それが、バイト仲間としてしか見ていなかった芹を初めて「女性」として意識した瞬間だった。


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