Crazy Love
俺はベンチから立ち上がると、植え込みの向こう側を歩く彼女を

「芹さん!」

と、付き合い始めのように「さん」付けをして呼び止めた。

芹は俺の声に気付き、キョロキョロと辺りを見回して、俺を見つけると、驚いた顔でこちらに向かって方向を変えて歩いてくる。

「びっくりした……」

口元に手をやり、大きな目を丸くして、絵に描いたような驚きようだった。

そんな芹の見事な驚きっぷりがなんだかおかしくて、一気に緊張がほぐれ、笑顔で次の言葉を発した。

「こんにちは。久しぶり…だね」

蝉の声がうるさいくらいに鳴り響いていた。

< 69 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop