Crazy Love
「いきなりゴメン。時間大丈夫かな?」
激しく汗をかいている俺を見て、彼女は「立ち話もなんだから」と、芹の勤めるカフェからそう遠くない小さな喫茶店に入ろうと言ってくれた。
「うん。少しなら大丈夫」
まるで時間が戻ってしまったような、以前と変わらない彼女の穏やかな話し方。
やわらかい笑顔。
こうやっていると、別れたのは夢だったか、俺の勘違いだったのではないかと思わされる。
「店長なんだね、今」
「う、うん」
「お店持ちたいって夢……叶ったんだ」
向かい合って座り、久しぶりに彼女の顔をまともに見る。
30歳になっているはずだけど、芹は「老けた」という感じは全くなく、むしろ大人の色気のような物が増して、とても魅力的な女性になっていた。
仕事で充実しているからなのか、満たされた私生活を送っているからか、3年前よりなんだか輝いて見える。