さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
自分より目上の者を、しかも一国の王たる者を、
ただの便利な道具のように扱うユーリの態度に、
レガ国王は眉をぴくりと動かした。
が、怒ることも態度を改めるよう求めることもなく、
「もういい。何でも好きにしろ」
ちょいちょいと手を振り、退出を促す。
本当に最近の若い者は礼儀がなっとらん、
などとわざと大きく呟く。
ユーリは王に一礼し、踵を返した。
王の口元が、喜びを孕んで緩んでいたことに、
背を向けたユーリが気づくことはない。
部屋を出て一人になった事を確認し長く伸びをすると、
ユーリは腰を軽く叩いてほぐした。
部屋にこもることが多い身には、馬での長距離の移動や、野宿がこたえる。
「さて、どうやってレイラの家族を助けようかな」
先が定まらないような口ぶりとは反対に、
その唇は自信に満ち溢れるように上を向いて笑っていた。