さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

自分より目上の者を、しかも一国の王たる者を、

ただの便利な道具のように扱うユーリの態度に、

レガ国王は眉をぴくりと動かした。


が、怒ることも態度を改めるよう求めることもなく、


「もういい。何でも好きにしろ」


ちょいちょいと手を振り、退出を促す。

本当に最近の若い者は礼儀がなっとらん、

などとわざと大きく呟く。


ユーリは王に一礼し、踵を返した。


王の口元が、喜びを孕んで緩んでいたことに、

背を向けたユーリが気づくことはない。


部屋を出て一人になった事を確認し長く伸びをすると、

ユーリは腰を軽く叩いてほぐした。

部屋にこもることが多い身には、馬での長距離の移動や、野宿がこたえる。


「さて、どうやってレイラの家族を助けようかな」


先が定まらないような口ぶりとは反対に、

その唇は自信に満ち溢れるように上を向いて笑っていた。


< 100 / 366 >

この作品をシェア

pagetop