さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
それを知ってか知らずか、ソリャンはレイラの髪にいとおしそうに触れてくる。
レイラはそのわずかな仕草に反応して、体温が上がっていくのを感じた。
「僕の妹も、君のように赤い髪をしていたんだ」
「妹さん、ですか?」
「うん。産まれて半年ほどで行方がわからなくなったんだ」
「“レイラ”様ですね」
それは、リア国に住まう人間なら誰でもが知っている有名な話だ。
生後7ヶ月にして、忽然と姿を消した王女。
国中にふれを出したが、今でもその行方はようとして知れない。
「妹にちなんで、レイラって名づける民が増えたとか。
君もその一人?」
「はい。父がレイラ様にあやかろうと名づけたと言ってました」
そっか、と言うソリャンの瞳が伏せられる。
その愁いを帯びた瞳の色に、
レイラは胸がきゅっとしめつけられて、苦しくなった。