さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「どうして、泣くの?」
泣かせるような事をした覚えは、まるでない。
声もなくはらはらと落ちて行く涙は、磨かれた宝石のようだ。
レイラは指で顔を拭きながら、ソリャンの想像もしていなかった答えを返した。
「レイラ様がおかわいそうで。今頃どうしていらっしゃるのか。
それに、ソリャン様も王様も、みんな辛い思いをしておかわいそうです」
「僕も?」
「はい。だって、妹さんと一緒に育つ機会を失ったんですもの。
私なんて、家族と離れて少ししか経っていないけれど、とても寂しいです。
それが、14年も続いているなんて」
虚を突かれたように、ソリャンが何度も目をしばたかせる。
「本当に、レイラはかわいいね」
ソリャンはレイラの頬を両手で挟むと、濡れた頬に唇を寄せた。
「私のために泣いてくれて、ありがとう。レイラ」