さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
入れ替わりに部屋に入ってきた足音を、ソリャンと勘違いして、
レイラはびくりと体を振るわせた。
だが、現れたのはソリャンとは正反対の冷たい顔をした男だ。
それなのに、なぜかレイラは心が解き放たれたように力が抜ける。
「サジ」
「どうかしたのか?」
落ち着いた低い声は、荒立った心をなだめてくれる。
まるで子守唄のようだ、とレイラは思った。
「ううん、なんでもない」
否定の言葉を紡ぎながら、
無意識に、レイラの手がしわを整えるように衣の裾を引く。
赤い目をしたレイラを一目見れば、何があったか手に取るようにわかる。
その原因が、“故郷を思い出して”なのか、
それ以外のことにあるのか。