さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
見張りの兵士どころか、侍女さえいない。
部屋から出てきたソリャンと考え合わせれば、
“何があったのか”、想像はたやすい。
懸命に歪んだ笑顔を見せるレイラに、
サジは、泣いていたのか、という言葉を飲み込んだ。
沈黙が気まずくて、レイラはとりあえず口を開く。
「ソリャン王子っていい人ね」
「そうか」
肯定とも否定ともつかない返事。
興味がないというのが正解かもしれなかった。
「いい人よ。細やかな気配りのできる素敵な人だわ。
私みたいな女の子にも、優しくしてくれて」
強い口調は、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえる。
「王子なら、外交術くらい身につけてるだろう。
どんなに嫌いな女とでも、長年連れ添った恋人のように談笑できる」
レイラの気持ちを逆なでするように、サジは顔色も変えずたんたんと返した。