さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
リア城に務める侍女たちの間では、
最近富に盛り上がっている話題がある。
それは。
「ねぇ、見た?」
「見たわよぉ。もうほんっとに、素敵。あの美しい銀髪なんて嫉妬しちゃうくらい」
「瞳の色も不思議よねぇ。
蒼い色なのに、銀色っていうか灰色っていうか。
光の加減で違って見えるのかしら」
洗濯籠を抱え、歩きながら会話する二人の侍女は、独身の若い娘だ。
「なんとかして、お話しする機会がないかしらねぇ」
「あんたの顔じゃ、無理じゃないの」
「あら、やってみなくちゃわからないわ。私、体には自信あるもの。
ひょっとしたら」
次の瞬間、前を良く見ていなかった侍女は、
大きな壁にぶつかって転び、悲鳴をあげた。
籠いっぱいの洗濯物が宙を舞う。