さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
気づけば、レイラが城へあがってから数ヶ月の月日が流れていた。
表面上は穏やかで、さざなみ一つ立っていない。
食べ物にも着る物にも困らず、毎日の家事で手があれることもない。
しかし、自分の作ったものをおいしいと口に入れてくれる人も、
穴のあいたぼろを繕って喜んでくれる人も、ここにはいなかった。
・・帰りたい。
役目のない自分が、無価値なもののように思えて、
レイラは寂しさに加え、むなしさを覚えた。
今日も、窓から鳥を眺めては、自分もあんなふうに飛んで行って、
父や姉に会いに行きたいと思うのだった。
ソリャンはあいかわらず一日も欠かさずレイラの元を訪れては、
何か不自由がないかと気を配ってくれる。
だから、いつものように扉を開けて入ってきたソリャンに、
何の警戒心もなく、おはようございますと挨拶した。