さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「いや、なんでもない」
サジの瞳がわずかに揺れるのを、レイラは見逃さなかった。
「どういう意味?私の家族がどうだというの?」
詰め寄るレイラは不吉な予感に胸がざわめく。
サジはふっとため息をついて言葉を発した。
「命がないかもしれない」
まるでそこらに転がっている石ころの話をするように、平坦な口調。
気づいた時には、レイラの右手が勢いよくサジの左ほおを叩いていた。
「変なこと言わないで!
ソリャン様は、彼はちゃんと約束してくれたんだから!」
蒼い瞳に、そっとまぶたが覆いかぶさる。
「すまない」
ぽつりとこぼした声が、静寂に吸い込まれていった。