さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
来た時と同じように、突然の訪問者は、いつ出て行ったのかわからなかった。
声をかけられたような気もするし、黙って去ったのかもしれない。
ただ、爪で金属をかきむしるような感覚が、
いつまでも胸の中に残る。
・・なんで。
サジはどうしてあんなひどい事を平然と言うのかしら。
いい人だと思ったのは勘違いなのだろうか。
・・ソリャン様に言った方がいいのかな。
手探りで答えを見つけるのは、容易なことではない。
はらはらと零れ落ちる涙は、どうしようもなく苦い味がする。
一人になった部屋で身じろぎもできず、
レイラは明け方まで一睡もできなかった。
(つづく)