さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

大勢の人間が、炎から身を守ろうと屋敷の中から這い出してくる。

門は開いたままで、人々を吐き出し続けていた。


「ユーリ様。ここは危険です。

いったん身を隠して策の練り直しを」


人目につくのを恐れ、兵が進言する。


ユーリは火元であろう建物を遠くから見据えると、首を横に振った。


「火勢のわりに、燃えているのは狭い範囲だ。

この火事で目的の人物たちにもしものことがあると手遅れだ。

この騒ぎに乗じて、中を探る」


ユーリは兵を3、4人ずつの集団に分けると、すばやく指示を与える。

待ち合わせの場所を確認すると、優秀な兵たちは俊敏な動きで四方に分かれた。


「よし、行くぞ」


ユーリは正面から屋敷に近づく役を自ら選択すると、

流れに逆流して、門をくぐった。


< 140 / 366 >

この作品をシェア

pagetop