さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
振り向いた時には手遅れだった。
抜き身の剣が、自分の喉元に当てられる。
ひやりとした感触が、火照った体に妙に心地よかった。
「馬屋はどこだ」
殺気を含んだ声は、若い女のものだ。
「う、馬屋?」
屋敷の人間なら、それくらいのことを知らぬはずがない。
「とぼけるなら、今すぐ貴様のそっ首叩き落すぞ!」
「わわわ。ちょっと待って!
ひょっとして、君、カマラじゃない?レイラの姉の」
木の幹と刃の間に挟まれいてた首が、わずかに拘束から解放される。
「どうして私の名前を知っている」
だが、カマラの声は逆に硬質になった。