さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

西にレガ国、東にリア国。

その真ん中、ちょうど国境を挟んで、その美しい湖は地面に横たわっている。

ヴィシューは、古語で“豊かな水”という意味だ。


その名の通り、豊富な水量を誇る湖で、

古来よりその周辺に多くの都が栄えた。


現在、ヴィシュー湖を内包している国は、レガとリアの2国のみだ。

湖はその性質から国境を引くことが難しいため、

レガ国とリア国の間で協定が結ばれ、両者の間で円滑に使用することが決められている。


のだが。


「それをリア国側が、きちんと守っていないと?」


洗い立ての長い金の髪は、頭の高い位置でまとめられており、

馬が振動するたびに、束になって右に左に揺れている。


乗馬が得意というだけあって、かなりの速度を出してもぴたりとついてくる。


カマラの横顔を見ながら、なんだが自分の方が負けてるような、

と弱気になり、ユーリは眉を下げた。

< 150 / 366 >

この作品をシェア

pagetop