さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
カマラは、はぁ~とため息を吐くと、声の調子を緩やかにした。
「聞いたわ。両国が湖の利権を巡って争わないように、
年毎に管理の仕方を話し合っているのでしょう?
例えば、その年の初めに湖でとる魚の量を話し合って決める。
そしてそれぞれの国で破らないように漁師に徹底を図る。
それを次の年に報告し、さらにその年の漁獲量を決定する」
「そう。10年ほど前までは、たいした管理をしなくてもうまくいってたんだ。
ところが、最近、どうもリア国側が規約を無視している疑惑が高まってね。
確実な証拠はないけど、噂話はいくらでもある」
湖の周囲を馬で迂回しながら、並走する二人の前方から向かい風が吹きつける。
「例えば?」
「例えば、リア国の人間が密漁をしているのを見逃しているとか、
レガ国側の漁師が漁をしていたら、リア国の兵士に連れ去られたとかね。
最近では、湖から直接水路を引いてかんがい用に使っているって話だ。
水量を守るために、それはしない約束のはずなんだけどね」