さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
特に気分を害することもなく、
ユーリは高い位置からのカマラの視線を正面で受け止める。
「リア国王の使いとしてジマールに会うつもりだったんだよ。
レイラが偽者だってばれたぞ!ってね。
で、焦ったジマールに取引を持ちかけようと」
「取引?」
「そう。偽者だけどソリャン王子がレイラを気に入ったから、このまま妻とする。
その代わり、家族は放免してやるように、って。
でもって、断れば、ジウチ王の命令で家を取り潰すってね」
「それで、国王の紋章が入った旗を用意してたのね」
実際には暗くて役に立たなかったが、
国王直属の兵士のみが着る太陽の模様が入った服を、ユーリたちは着用していた。
ご丁寧に、国王の紋章が入った旗を掲げて。
カマラは慣れた様子で馬を下りると、
手綱を持ったまま、ユーリの傍へやってきた。
「きちんとお礼を言っていなかったわね。
皆を助けてくれてありがとう」
頭を下げると、長い髪のたばが鞭のようにしなった。