さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

「それじゃあ」


期待に目を輝かせたレイラを見て、

ソリャンが言いにくそうに一拍置いてから、ゆっくりと口を開いた。


「どうやら、そこが出火元らしいんだ」


さっきまでの穏やかな景色が、全て色あせて見える。


「ジマールの報告によると、死者はいないそうだ。煙を吸った軽症者が数名。

今は使っていない倉庫での失火が原因とのことだ。

その倉庫というのが、つまり」


「皆がいた牢ってこと、ですね」


首を横に振って欲しかったのに、

期待もむなしく、ソリャンはこくんと頷いた。


うまく息ができない。


視界が粘土のようにぐにゃりとつぶれたかと思うと、天井がぐるりと回転した。


「レイラ!」


大声で人を呼ぶソリャンの声で、あたりは騒然となった。


青空を旅する雲たちが、悠然とそれを眺め、足早に過ぎ去っていった。









< 164 / 366 >

この作品をシェア

pagetop