さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「それじゃあ」
期待に目を輝かせたレイラを見て、
ソリャンが言いにくそうに一拍置いてから、ゆっくりと口を開いた。
「どうやら、そこが出火元らしいんだ」
さっきまでの穏やかな景色が、全て色あせて見える。
「ジマールの報告によると、死者はいないそうだ。煙を吸った軽症者が数名。
今は使っていない倉庫での失火が原因とのことだ。
その倉庫というのが、つまり」
「皆がいた牢ってこと、ですね」
首を横に振って欲しかったのに、
期待もむなしく、ソリャンはこくんと頷いた。
うまく息ができない。
視界が粘土のようにぐにゃりとつぶれたかと思うと、天井がぐるりと回転した。
「レイラ!」
大声で人を呼ぶソリャンの声で、あたりは騒然となった。
青空を旅する雲たちが、悠然とそれを眺め、足早に過ぎ去っていった。