さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

「助かったよ。ありがとう」


ユーリの謝辞に、兵士はとんでもありません、と弾むように答える。



・・ひょっとして、こんな人でも人望はあるのかしら。



そう思えば、ここへたどり着くまでにも、

兵士はユーリの命令に、実に忠実に従っていた。


水中を必死に歩き、へとへとになっているユーリの様子を見て、

カマラは意外に思った。


「ユーリ様。こちらです。足元にお気をつけて」


別の兵士が、道先案内を務める。

周囲は背丈のある草がうっそうと生い茂り、

それを踏みならした細い道を歩いていくらしい。


月明かりでは心もとなく、松明があっても足元は暗い。

わかった、と返事をして、ユーリがカマラをすり抜けようとした時。


「わっ!!」


予想通り、とでもいうのか。

草地に足を取られ、ユーリの体が傾いた。


「きゃあっ!」




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