さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
・・なによ。城に出入りできる身分だからって、偉そうに。
体についた草の葉を両手ではらったが、
泥のついた手では余計に衣の汚れを増すばかりだ。
やはり単なるどじな男だ、とユーリの評価が固まったところで、
カマラは、対岸にゆらりと揺れるかすかな炎を目にした。
「ユーリ。あれは何?あれも、あなたの仲間なの?」
カマラの問いかけに、全員が後ろを振り仰ぐ。
「火を消せ!伏せるんだ」
ユーリの命令で兵士が火を消すと、一瞬で闇の世界に引きずり込まれた。
もしや、見張りの兵でもいたのだろうか。
カマラの心臓が早鐘を鳴らす。
静寂が支配すること数拍。
「カマラ。ちょっと寄り道していい?」
買い物にでも行くような明るい口調。
ユーリはカマラの肩を軽やかに叩く。
顔は見えないが、なぜかユーリが笑っているように思えて、
カマラはますますこの男がわからなくなった--。