さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
『置いて行かないで!』
燃え盛る炎の中で、レイラは必死に手を伸ばした。
目の前には何があっても揺るぎそうにない、がっしりとした父の背中と、
何かあるたびに自分を甘えさせてくれた優しい姉の背中。
「いやっ!」
自分の悲鳴に全身が突っ張り、レイラは瞳を開いた。
・・夢?
ほのかな光が、床に窓枠の影を形作る。
そこが、自分の寝室だとわかって、レイラは肩を落とした。
・・全部夢だったら良かったのに。
盗賊として捕らえられたことも。城を訪れたことも。
--二人が死んでしまったことも。全部。