さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

『置いて行かないで!』


燃え盛る炎の中で、レイラは必死に手を伸ばした。


目の前には何があっても揺るぎそうにない、がっしりとした父の背中と、

何かあるたびに自分を甘えさせてくれた優しい姉の背中。


「いやっ!」


自分の悲鳴に全身が突っ張り、レイラは瞳を開いた。



・・夢?



ほのかな光が、床に窓枠の影を形作る。


そこが、自分の寝室だとわかって、レイラは肩を落とした。



・・全部夢だったら良かったのに。



盗賊として捕らえられたことも。城を訪れたことも。


--二人が死んでしまったことも。全部。





< 176 / 366 >

この作品をシェア

pagetop