さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
体の上に馬乗りになられ、身動きが取れなくなる。
抵抗しようと腕を振ったが、すぐに何かが顔に押し当てられた。
それは単なる布のようだったが、
鼻と口にものすごい力で押し付けられ、息ができない。
「ん、んん!」
苦しさに腕を伸ばすと、自分の顔をふさいでいる何者かの腕にあたる。
残った力を全て注いで、その腕に爪を立てた。
しかし、かけられる力は緩むどころか、ますます強くなる。
目の前がちかちかして、視界が黒ずんでいく。
・・いや。誰か助けて!
息を吐くことも吸うこともできず、レイラの意識が遠くなる。
最後の抵抗に食い込んでいた爪が、急速に力を失う。
・・お父さん、お姉ちゃん。
サジ。
これが死というものなのだと、どこか冷静なもう一人の自分が覚悟を決めた。